別編 民俗2 尾張
1 県民参加の県史
民俗部会では平成7年度から19年度にかけ、尾張地域の約260か所で、主に大正~昭和初期生まれの1500名以上の方々から聞き取り調査をおこないました。それをもとに、高度経済成長以前の庶民生活のようすを、分かりやすく記述しました。
2 尾張の特徴を踏まえた構成
生業、衣食住、社会生活、人の一生、年中行事、信仰、民俗芸能、口承文芸といった分野別の構成になっています。このうち生業分野では、大都市・名古屋を擁した尾張の特徴として、「マチとムラをつなぐ生業」という項目を設けました。ここでは、地理的条件に基づく「平地の生業」「海の生業」といった枠組みを超え、マチとムラとの交流の中で成立した瀬戸の陶磁器産業、知多の醸造などを取り上げました。
3 水郷の生活
かつて尾張西部に広がっていた水郷地帯の生活のようすを紹介しています。道路の代わりに水路を小舟で行き来していたことや、頻繁に見舞われた水害への対策として、高い石垣の上に建築した水屋のことなど、現在では忘れられつつある民俗を、詳しく記録しました。
4 尾張の芸能
巻頭の口絵では、尾張における特徴的な民俗芸能を、臨場感あふれるカラー写真で掲載しました。津島祭りの巻藁船や、尾張各地に数多く存在する山車とそれに付属するからくり人形、尾張西部を中心に分布する金箔張りの豪華な神楽屋形、そのほかにも梯子獅子や尾張万歳など、尾張独特の芸能を豊富に取り上げました。